Point 1.有機色素系では珍しい近赤外線発光(1000nm付近)を示す
Point 2.メカニズムがエキシマ形成なため、固体集積して初めて発光を示す(選択性の高い発光)
Point 3.2を応用し、生体内の患部にのみ集積させて、イメージングプローブとして利用可能
エキシマ形成を利用して近赤外線発光
ポルフィリン骨格分子は、自然界では赤血球中のヘモグロビンや葉緑素のクロロフィルなどに含まれており、赤などの可視光領域に広く蛍光を示します。本特許では、ポルフィリン分子が凝集状態で、励起された分子と別の基底状態の分子が相互作用することで発光する「エキシマ形成」を利用して、凝集した時のみ1000nm付近で発光するという材料を提案しています。
有機分子に珍しい1000nm付近の発光
本特許のポルフィリン骨格分子に限らず、有機分子は化学修飾でπ共役系を拡張していくことで発光色を長波長側へシフトさせることが可能です。一般的な有機分子の蛍光は紫外~可視領域(200nm~700nm)が一般的で、π共役系を拡張してもせいぜい800nmくらいが限界となります。それ以外は、分子内励起ではなく、超分子相互作用的な分子間での励起を利用する必要があります。本特許の分子も、分子内励起は700nmくらいに蛍光ピークがあり、1000nmの発光は分子間相互作用によるエキシマ形成によるものです。従来技術との比較従来技術との比較量子ドットは化合物半導体のナノ粒子を利用しているためもともと近赤外線付近のものも多いですが、生体プローブとして使うには毒性の問題を考慮する必要があります。
深部組織の発光イメージングへ展開
本特許のプローブは2つの点で生体イメージングにメリットを発揮します。1.生体透過性の高い800~1300nmの波長領域(生体の光学窓)で発光するため、皮膚表層の幹部だけでなく肺、胃、膵臓などの深部組織でもイメージングが可能になります。(図4)2.プローブの発光選択性が高い。つまり、血管内を低濃度で移動している場合は1000nmの近赤外線発光を示さずに、他の分子設計と合わせて患部にプローブが集積することで初めてエキシマ形成を示すようになり、患部だけを効果的にマーキングすることが可能です(図5)。